抄録
1961年から1964年まで,富士山において発生したストロープマツ造林木の葉さび病について2, 3の観察と実験を試みた。
1) 本病発生地で採取したさび胞子の接種試験結果によって,これらはすべてCleosporiumeupatorii ARTHURであることを明らかにした。
2) さび胞子の中間寄主に対する感染距離は比較的短く,多くはストニープマツ造林地内およびその至近距顕離に限られる。しかしごく一部では約100mに達した。
3) 夏胞子による感染範囲は, 7月下旬では初期感染源より約100~500m, 9月中旬では調査地約80haの全域,最長1,000mにもおよんだ。ただしこれらの感染密度は感染源に近いほど,また主風の風上方向より風下方向で高い傾向が認められた。
4) 富士山2合目付近で,天然生キタゴヨウマツに寄生するC. eupatorii ARTHUR菌を採取した。これは本文で述べた同菌によるストロープマツ葉さび病の発生源であったと推定された。