日本林学会誌
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スギに生ずるValsa属菌とその2, 3の性質
小林 享夫浜 武人
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1969 年 51 巻 1 号 p. 12-18

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抄録

スギに記載された3種のValsa属菌, Valsa cryptomeriae KITAJIMA, V. cryptomeriaecola HARA (=V. cryptomeriae HARA) およびV. sugifolia HARAの異同を新しい材料,科学博物館所蔵標本および記載によって比較検討した結果,これら3種のValsa属菌はいずれも同一種であるとの結論に達した。先命権はValsa cryptomeriae KITAJIMA (1918年1月)にあり,あとの2種はその異名となる。なお欧米において針葉樹上に著名なValsa abietis FRIESとの異同の検討は保留した。
本菌の子のう胞子および柄胞子は2%素寒天およびジャガイモ寒天培地上できわめて良好な発芽をし,柄胞子は発芽に際して著しくふくらむが,蒸溜水中では柄胞子の発芽はみられなかった。ジャガイモ寒天,斉藤氏しょう油寒天上で菌そうはよく発育し,約1か月後に柄子殼を形成したが,ワックスマン氏寒天,スギ葉煎汁寒天,トウモロコシ煎汁寒天培地上では菌の発育は悪く,柄子殻の形成もなかった。本菌の発育適温は20°C前後にあり,範囲は5~30°Cであった。
5~12月にかけての茎枝に対する無傷,切傷,焼傷接種の結果, 11月および12月に行なった焼傷接種のみが病斑の拡大から枯死にいたり,柄子殼の形成も行なわれた。

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