日本林学会誌
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スギのよせ植えによる凍害防止効果
土井 恭次堀内 孝雄岡上 正夫
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1970 年 52 巻 4 号 p. 120-125

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抄録

スギの凍害は,わが国では,由間部の低凹地,斜面下部のような低温気流のたまりやすいところのほかに,広い平坦台地や南面斜面にも.発生することが,九州をはじめ,全国的に確認されている。このうち,後二者の地形における凍害防止法として,上木による保護効果と,幹下半部の被覆効果がある。この試験は,幹下半部の被覆効果を対象として,保護隈界のしゃへい度を定量的にっかむため,植栽間隔をかえて,しゃへい産と被害との関係を求めた。
試験地は,スギ凍害の常習地である,茨城県東茨城君納原町字鯉淵にある茨城県営鯉淵苗畑内に設定,苗本は,クモトオシの2年生および3年生苗を用い, 1967年4月に植付けた。苗本の配置は,半径が逐増する8コの問心円を作り,その円周を24方位に分けて,その交点に植栽することにした。この同心円の半径は,内側から, 0.8, 1.2, 1.7, 2.4. 3.4, 4.9, 7.0, 10.Omとした。この凹を8組設定した。ただし, 3年生苗は,半円状とし,罰心円は7ことした。 1967年11月から翌年5月まで,凍害発生の状況を観察調査した。幹下半部におけるしゃへい慶は,示差放射計で純放射董を渕定して算出した。その結果はつぎのとおりである。
(1) 2年生苗は,苗高57~75cmになり,第1円はほぼ完全に,第2円は大部分が枯死をまぬがれた。植栽間隔20~30cmまでは, 80~90%が生存した。
(2) 3年生苗は,苗高85~120cmとなり,第1, 2, 3円の大部分は枯損をまぬがれ,第4需の多くのものも生存した。植栽聞隔が40~70cmであれば, 80~90% 生存した。
(3) 苗木の大きさ,植栽間隔が異なっても,しゃへい度と生存率の関係は一っの曲線で表示できるようだ。しゃへい慶40% までは,約9096の苗木が生存可能であったが,しゃへい慶が40% 以下になると,生存率は急速に低下した。

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