日本林学会誌
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多雪山地におけるブナ林皆伐後の伐根の転倒にともなう表層崩壊の発生
相浦 英春嘉戸 昭夫長谷川 幹夫
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1996 年 78 巻 2 号 p. 150-156

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抄録

ブナ林皆伐後の伐根の引抜強度の変化を測定するとともに,多雪山地における積雪移動量と斜面雪圧の観測を行い,両者を比較することによって伐根の転倒にともなう表層崩壊発生の可能性について検討を行った。伐根の引抜強度は根元直径が小さいほど,伐採からの年数が経過したものほど小さく,これら二つの変数によってほぼ説明された。また,伐採から9年経過した伐根の多くは,根元付近の折損によって脱落したことから,表層崩壊のきっかけとなる伐根の転倒は,それ以前に生ずるものと考えられた。斜面積雪の安定性は植生条件や積雪深によって異なった。また,斜面雪圧は1冬期間の積雪移動量にほぼ対応し,積雪が安定な斜面では100~300kPa,やや不安定な斜面では800kPa程度,不安定な斜面では2~5MPaであった。以上の結果から,伐根の引抜強度と斜面雪圧を比較したところ,多雪山地における伐根の転倒による表層崩壊発生の可能性が示唆された。また,森林の伐採が高伐りによって行われた場合や,伐採された林分が小径木で構成されていた場合に,その可能性は大きくなるものと判断された。

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