日本林学会誌
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焼畑にともなう火入れが土壌の窒素動態に与える影響
斜面地形との関係
宿 聚田片桐 成夫金子 信博長山 泰秀
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1996 年 78 巻 3 号 p. 257-265

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抄録
島根県仁多郡仁多町の二次林伐採跡地で火入れ前後の土壌窒素量を調べることにより,焼畑造林が土壌窒素の動態に与える影響を明らかにした。二次林の伐採は土壌窒素の無機化と硝化活性を促進した。さらに,火入れによる土壌の温度上昇が土壌中の無機態Nを顕著に増加させた。火入れ直後,谷部では表層土壌のNH4-Nの増加が多く,NOx-Nの増加は少なかった。尾根部では表層土壌のNH4-Nの増加が少なく,尾根上部のNOx-Nは変わらなかった。谷下部では土壌からのNOx-Nの溶脱が多かった。火入れ後に尾根部では窒素の流亡の可能性は少なく,谷下部では窒素の流亡の可能性が大きいと考えられた。火入れ後3カ月の間に土壌中でのNH4-NとNOx-Nの移動量が顕著に増加した。火入れ直後に尾根下部と谷部で表層土壌の無機化能と全層土壌の硝化能が減少したことは火入れ後の微生物による窒素の有機化が原因していると考えられた。火入れ後の微生物の窒素の有機化によって,土壌への火入れの影響を緩和することができた。火入れが土壌の窒素動態に与えた影響としては火の行動が非常に重要だと思われる。
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