日本林学会誌
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ケヤキ選抜成木の腋芽培養によるクローン大量増殖
原口 雅人
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1998 年 80 巻 4 号 p. 283-292

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抄録

腋芽を有する節小片を材料にしたケヤキ成木の試験管内大量クローン増殖技術について検討した。800年生および500年生の銘木個体および樹冠が狭く幹が通直な70年生の個体など6個体を材料として,新梢および切り枝の水挿し萌芽の節小片を外植体とした。初代培養では,新しく開発した硝酸アンモニウム900mg/l添加のケヤキ用培地(Z培地)がシュート伸長に適していた。継代培養では硝酸アンモニウム700mg/l添加のZ培地がシュート伸長•増殖の維持に有効であった。節小片の挿し付け角度および培養容器の大きさと培地量がシュート伸長に影響を及ぼした。継代培養でシュート伸長量の小さいいくつかの系統は,900mg/l硝酸アンモニウムを含むZ培地に,115 mg/lリン酸2水素アンモニウムを加え,さらにBAPと新サイトカイニンの6-{N-[2-(N-メトキシ-N-メチルアミノ)エチル]アミノ}プリンを組み合せて添加することで伸長が促進され,永続的な増殖に成功した。発根培養では,葉の付いた節小片ごとに切断し培養することで,多くの幼植物を得ることができた。幼植物は容易に順化•育苗できた。

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