日本林学会誌
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根萌芽を発生するシウリザクラの根の形態学的•解剖学的特徴
小川 みふゆ相場 芳憲渡辺 直明
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1999 年 81 巻 1 号 p. 36-41

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抄録

シウリザクラの根萌芽を発生している根の特徴を調べた。根萌芽を発生している根と,根萌芽を発生していない根の形状,およびそれらと根萌芽の幹の横断面を顕微鏡写真から観察し,あわせて道管の大きさを計測した。また,野外においてシウリザクラの母樹を中心とした根萌芽の発生位置図の作成と根萌芽発生根の直径の変化を測定した。さらに,伐出した根株から発生している二次根について分岐部からの距離による直径の変化を測定した。根萌芽発生根の直径は,母樹の根元から200cm以上離れるとほぼ一定になった。根株を構成する二次根には,母樹の根元から120cmを超えると根の直径が約1.2~1.5cmに収れんする型(A型)と,120cm以内で0.5cm以下になる型(B型)がみられた。根の直径の減少パターンからみると,根萌芽発生根は,二次根のなかのA型の根であると考えられた。また,根萌芽発生根の解剖学的縦断面での特徴は,蔓植物の茎に類似して直径100μmを超える著しく太い道管が数多くみられた。一方,根萌芽非発生根では著しく太い道管はみられなかった。これらのことから,シウリザクラの根萌芽発生根は,水分の移送系に密接にかかわっている根である可能性を考察した。

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