日本林学会誌
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福岡県におけるスギさし木品種と精英樹のRAPD分析
後藤 晋家入 龍二宮原 文彦
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1999 年 81 巻 3 号 p. 187-193

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抄録

福岡県におけるスギのさし木品種を識別し,さらに精英樹との関係を明らかにするためにRAPD分析を行った。320プライマーのスクリーニングを行った結果,14プライマーによる14バンドが識別に有効なマーカーとして選抜された。これらのマーカーは,異なるPCR反応において高い再現性を示し,また研究機関によらずに普遍的に活用できるマーカーであることが確認された。これらのマーカーを用いて12品種65個体のDNA型を調査した結果,ホンスギとヤイチが二つのDNA型を示した以外は,その他の品種内では同じDNA型を示した。品種間では,ホンスギの一部(ホンスギA)とアヤスギ,および別のホンスギの一部(ホンスギB)とマスギとアオバジスギはそれぞれ同一のDNA型を示し,地スギと総称されるこれらの品種の呼び名に混乱が生じていることが示唆された。次に,福岡県産スギ精英樹48クローンのRAPD分析を行った。その結果,10クローンがさし木品種のアカバ,3クローンがヤブクグリ,1クローンがホンスギB(マスギ,アオバジスギ),1クローンがシチゾウ,1クローンがナガエダと同一のDNA型を示した。以上のように,本研究で得られたRAPDマーカーは,スギのさし木品種と精英樹のクローン識別に有効であることが示された。

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