日本林学会誌
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CO2排出権取引を想定した森林経営の環境経済学的分析
坂田 景祐木平 勇吉田中 純一井上 公基
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キーワード: フローアプローチ
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2001 年 83 巻 3 号 p. 220-224

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抄録

今後CO2排出権取引導入に伴う森林経営収支の変化をモデル地域を設定し, 伐期齢ごとに算出した。森
林が吸収するCO2のカウント方法はフローアプローチ方式を用い, 伐採収支に排出権取引の収入を加算して経営収支を算
出した。その結果, 収益率最大の伐期齢が, 排出権取引を想定しなかった場合では95年であったが, 想定した場合では90
年となった。この伐期齢の変化に伴うメリットとして, 伐期のサイクルが短縮することにより, 1.38t/haの炭素をより多
く獲得することが挙げられる。他のメリットは, 森林経営者に追加収入が見込まれ森林整備が行き届く可能性, 伐期が短縮
することでの雇用の拡大。間伐収入に追加収入が見込まれ, 間伐材の利用促進の可能性。排出権取引を国民と身近な距離に
することで, 温暖化問題の意識を国民に植え付ける間接的な温室効果ガスの削減の可能性を挙げた。デメリットは, 消費者
が排出枠を負担することであり, 木材需要を抑えることを挙げた。また, 排出権取引導入で考察すべき事項についても考察
した。

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