ジャーナル「集団力学」
Online ISSN : 2185-4718
ISSN-L : 2185-4718
日本語論文(英語抄録付)
「養親-養子」家族における「産みの母」の位置
核家族への示唆
樂木 章子
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キーワード: 養子, 産みの母, 規範, 核家族
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2010 年 27 巻 p. 1-16

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抄録

 本研究は、ある養子斡旋団体を通じて養子を迎えた家族の中で、産みの母がいかに位置づけられているかを検討したものである。その養子斡旋団体は、養子を迎えた後、養親-養子関係について秘密にすることなく、なるべく早くから養子に伝えていくよう指導している。また、産みの親の権利をも尊重し、産みの母、養親、養子が希望すれば、養子が産みの母と会えるよう努めている。本研究では、4組の養親夫婦にインタビューを行い、①日々の生活における産みの母に関する言及、②産みの母との手紙のやりとりや、産みの母から養子への贈り物、③産みの母と養子の面会についての経験を調査し、それを通して、家族の中で産みの母がどのような位置づけにあるのかを考察した。その結果、養親・養子の間には「産みの母に感謝すべし」という規範が形成されており、産みの母は、その規範が帰属される(ある程度)抽象的な身体として位置づけられていると考察した。養子の成長の区切り(小学校入学など)では産みの母との面会をもちつつも、頻繁な接触は避けられる傾向にあることも、規範が帰属される身体としての抽象性を保持する機能、すなわち、過度に具象的となることを回避する機能をもつと解釈した。最後に、育てる親と育てられる子という集団の外部に、(子育てをめぐる)規範が帰属される身体を有していない核家族に対する本研究の含意を述べた。

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© 2010 財団法人 集団力学研究所
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