抄録
せん妄は総合病院においてしばしば認められており,身体疾患の併発や死亡率の増加をもたらしている。今回われわれは,当院での食道癌の手術前に精神科が介入することでせん妄の発症や経過についてどのような変化がもたらされるかを検討し,せん妄の予測と予防に関する最近の知見を呈示するとともに報告した。われわれの手術前の介入により,術後のせん妄発症率や発症したせん妄に対する薬物療法を必要とした症例数は,ともに減少傾向はみられたものの有意差は得られなかった。 その理由として,今回の研究ではせん妄の危険性の情報提供にとどまり,非薬物療法的アプローチに関する具体的な指導が十分でなかったことにより,医療スタッフ間で患者への対応の相違があったことが予測された。今後は教育的介入をより強化し,医療スタッフの患者への対応の標準化を行っていくことがせん妄発症や重症化の予防に寄与する可能性があると考えられた。