総合病院精神医学
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総説
自殺問題が深刻化してから以降のわが国の自殺未遂者対策の経緯
河西 千秋
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2011 年 23 巻 3 号 p. 241-246

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抄録
わが国で1998年に自殺が激増してから以降,自殺対策基本法(2006年),自殺総合対策大綱(2007年)が整備され,国としての対策事業が開始されている。自殺対策を講じる際には,自殺の危険因子の把握や科学的な根拠(エビデンス)を踏まえたうえでの予防方略の実践が重要であるが,「自殺未遂」は既知の危険因子のなかで最も明確で強力なものであり,自殺予防学において未遂者対策は要諦と位置付けられている。予防方略に関しては,未遂者対策に関して世界的にエビデンスは未確立である。わが国の未遂者対策の経緯において,重要な2つの展開がみられる。1つは,自殺未遂者の自殺再企図防止方略を高いエビデンス・レベルで確立しようと開始されたACTION-Jプロジェクトである。また,もう1つは,自殺未遂者ケアのための各種ガイドラインの作成の動きと,これと符牒して実施されている各種研修事業である。社会的取り組みとしての自殺対策が叫ばれているなか,未遂者ケアは,医療施設・従事者が担うべき課題の一つであるが,そのための実践活動が広がりつつある。
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© 2011 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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