腎臓移植患者の手術前の精神状態と心理反応について,State-Trait Anxiety Scaleを用いて特性不安との関係から検討した。腎移植前の患者40名を20名ずつの高特性不安群と低特性不安群に分け,両群に質問紙による不安と抑うつの調査と,面接による「人工透析への苦痛の程度」と「手術後の生活のイメージ」について,それぞれの評価得点と評価理由を調査した。質問紙調査では高特性不安群は低特性不安群よりも不安と抑うつが有意に高かったが,面接調査では両群の発言内容に違いは認められず,腎臓移植前の患者は特性不安の程度に関わらず,両群で85%以上が人工透析に対する否定的感情を,70%以上が手術後の生活に対する肯定的イメージを抱いていた。以上より,腎移植前の患者に接する医療者は,患者が人工透析や移植後生活を含め,さまざまな不安や抑うつを抱いていることに注意し,より詳細な面接を行う必要があることが示唆された。