抄録
愛着理論は乳幼児期のみならず,思春期の情緒・行動障害への介入において重要な意義をもつことが精神保健の領域でも認識されてきている。本論文では,思春期の臨床における愛着の意義,その評価と介入について概観した。近年は愛着形成の過程とその障害やリスク状態までを含む次元的なスペクトラム・モデルが呈示され,ライフステージに沿った診断と評価が検討されていた。ことに思春期では,自律や性の問題に直面することが新たな脅威となり,愛着障害行動が生じることがさまざまな情緒・行動上の問題の背景として指摘されていた。治療では愛着に基づく介入として,脅威となる状況の変化とともに家族を含む支援システムが愛着対象として機能することが重要となる。