暴力被害や交通事故などのトラウマ体験をもつ患者は, 回復の途中で家事事件や裁判など司法に関わる場合が少なくない。PTSDなどの症状がある場合,裁判などを契機とする症状悪化が指摘される。司法手続きに関与しながら適切な行動がとれずに相談のあったDV被害者5名に,筆者らが開発した心理的サポートを行い,その後,面接において被害者が抱える困難を明らかにするとともに,心理的技法を用いたサポートの有効性を検証した。司法のプロセスで経験した困難の多くは,恐怖反応やPTSDなどの症状と関連しており,これらの症状が司法手続きを阻害する一因となっている可能性が示唆された。メンタルヘルスの専門家によって行われる心理的サポートは,症状によって自分の権利を十分に行使できない状態にある人が,行使できるようになることに一定の貢献があったと考えられた。
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