総合病院精神医学
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24 巻, 3 号
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特集:総合病院における児童・思春期治療の現状と課題(1)
経験
  • 山田 佐登留
    2012 年 24 巻 3 号 p. 214-221
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    平成22年3月に小児科の総合病院の一部門としてスタートした東京都立小児総合医療センター(以下当院)の児童・思春期精神科の現状を報告した。平成23年度退院患者および平成23年度末入院患者合計692名のICD診断の診断分類を示した。広汎性発達障害(自閉症,アスペルガー障害,他の広汎性発達障害)が入院患者の45%を占めており,ほかに多いのは統合失調症,適応障害などであった。当院前身の子どもの精神科病院に比較して,平均在院期間は90日前後と大幅に短縮していた。入院治療が必要な患者の早期入院,早期退院がある程度実現されているが,長期の『育てなおし,育て上げ』的な入院加療が難しくなり,毎年4〜6月の病床利用率の低下が目立つなど今後検討していくべき課題も認められた。現在実施している児童・思春期精神科の後期臨床研修についても報告した。
原著
  • 小澤 いぶき, 宮崎 健祐, 田中 哲, 市川 宏伸, 黒田 安計
    2012 年 24 巻 3 号 p. 222-229
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    背景:東京都立小児総合医療センタ-児童・思春期精神科(以下当科)は,2010年3月の開院後より小児精神科救急を導入している。今回,診療開始から1年間に当科へ緊急入院した患者の統計および,そのなかで身体合併症治療目的に緊急入院となった患者の統計を集計したので報告する。対象と方法:2010年3月から2011年3月までの1年間に,当科へ緊急入院した患者について診療録に基づき統計をとり,そのなかから身体合併症目的に入院した患者について検討した。診断にはICD-10を用いた。結果:開院後1年間で当科に緊急入院した患者総数は122名で,診断としては統合失調症が最も多く,次いで多かったのが発達障害圏であった。このうち,身体合併症治療目的での緊急入院は6名であった。考察:統合失調症に次いで多かった発達障害圏の患者の入院治療は,その特性理解と,それをふまえた対応が求められる。小児精神科の緊急入院が可能な医療機関が限られているなか,そのような患者の身体合併症治療における当科の役割および,他科,他院や関係機関との連携についての検討を行った。
総説
  • 山下 洋
    2012 年 24 巻 3 号 p. 230-237
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    愛着理論は乳幼児期のみならず,思春期の情緒・行動障害への介入において重要な意義をもつことが精神保健の領域でも認識されてきている。本論文では,思春期の臨床における愛着の意義,その評価と介入について概観した。近年は愛着形成の過程とその障害やリスク状態までを含む次元的なスペクトラム・モデルが呈示され,ライフステージに沿った診断と評価が検討されていた。ことに思春期では,自律や性の問題に直面することが新たな脅威となり,愛着障害行動が生じることがさまざまな情緒・行動上の問題の背景として指摘されていた。治療では愛着に基づく介入として,脅威となる状況の変化とともに家族を含む支援システムが愛着対象として機能することが重要となる。
総説
  • 館農 勝
    2012 年 24 巻 3 号 p. 238-244
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    文部科学省の調査によると,心理的・情緒的あるいは社会的要因による年間30日以上の欠席とされる不登校の数は,小学校から高等学校までを合計するとおよそ17万人にのぼる。また,近年行われた大規模な調査の結果,社会的参加を回避し6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態とされるひきこもりの数は約23万人と報告されている。どちらもその数は非常に多く,社会現象ともいえる状況である。その解決に向けては,精神科医療・教育・福祉などの専門機関が連携して支援を行うことが必要である。本稿では,不登校・ひきこもりの実態について,両者に共通するとされる思春期心性について,その理解および支援のための多軸的な評価について,背景にひそむ精神障害の診断について,そして総合病院における不登校・ひきこもり支援について,先行研究や『不登校対応ガイドブック』,『ひきこもりガイドライン』を引用しながら概説する。
一般投稿
原著
  • ─5年間の実証研究─
    宮川 真一, 井上 幸代, 比嘉 謙介
    2012 年 24 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    総合病院で身体合併症専用病棟として開設された精神病棟の5年間の実績を検証し,身体科医が主治医となって精神科医が管理するリエゾン精神病棟(liaison psychiatric ward)の重症身体合併症医療における有用性を提言した。精神科医2名,5床からなる小規模の病棟で,5年間の合併症入院患者数は687名,平均入院日数は13.0日であった。入院経路は,救命救急センター経由が552例(80%)と大多数を占めた。入院形態は,医療保護入院491件(71%),任意入院179件(26%),措置入院17件(3%)であった。救命救急センターや身体各科,地域の精神医療機関との連携により身体治療に重点をおいた短期入院で運用を行えば,精神的にも身体的にも重症の合併症に対応できる効率的なリエゾン精神病棟が実現できることを示した。
  • 本田 りえ, 野口 普子, 嶋 美香, 小西 聖子
    2012 年 24 巻 3 号 p. 253-260
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    暴力被害や交通事故などのトラウマ体験をもつ患者は, 回復の途中で家事事件や裁判など司法に関わる場合が少なくない。PTSDなどの症状がある場合,裁判などを契機とする症状悪化が指摘される。司法手続きに関与しながら適切な行動がとれずに相談のあったDV被害者5名に,筆者らが開発した心理的サポートを行い,その後,面接において被害者が抱える困難を明らかにするとともに,心理的技法を用いたサポートの有効性を検証した。司法のプロセスで経験した困難の多くは,恐怖反応やPTSDなどの症状と関連しており,これらの症状が司法手続きを阻害する一因となっている可能性が示唆された。メンタルヘルスの専門家によって行われる心理的サポートは,症状によって自分の権利を十分に行使できない状態にある人が,行使できるようになることに一定の貢献があったと考えられた。
経験
  • ─「総合病院精神科の現状と目指すべき将来─総合病院精神科のネクストステップ2009 ─」の視点から─
    鵜飼 克行
    2012 年 24 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2012/07/15
    公開日: 2016/05/29
    ジャーナル フリー
    総合病院の精神科は,現行の診療報酬体制においては,収益という面では非常に厳しい現実がある。このために統計的にも明らかにされているとおり,多くの総合病院で精神科病床の削減・閉鎖や,精神科診療そのものが廃止されるに至っている。そのなかでも,総合病院における「認知症の専門外来」は,収益性においては最も厳しい部門であると思われる。総合病院における認知症専門外来に期待される役割は,いろいろな診断機器・専門家による早期発見や鑑別診断,身体合併症対応であろう。このためには,各種の血液検査・神経心理検査・画像診断などが,一般の精神科外来よりも多く実施されていると思われるが,これらに伴う収益は,総合病院における認知症専門外来を存続可能にする条件を満たしているとはいい難い。これを当院の認知症専門外来の収益性について,実際の数値で検討・確認した。さらに,現在の病診連携の有効性についても検討し,その問題点を指摘した。
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