総合病院精神医学
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経験
飛び降りと刃物による自殺企図患者の臨床的特徴と差異について
京野 穂集竹内 崇武田 充弘池井 大輔高木 俊輔治徳 大介西川 徹
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2012 年 24 巻 4 号 p. 361-366

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抄録

自殺手段として飛び降りを選択した患者と,刃物による自傷を選択した患者との間では,どのような共通する特徴や差異があるかについて調査した。対象は2006年7月より2011年6月までの5年間に,自殺関連行動により救急搬送されERセンター救急科に入院となった患者718名のうち,自殺手段として高所から飛び降りた群(以下「飛び降り群」とする)(n=23名)と,浅いリストカットを除いた刃物による重篤な自傷(頸部,胸腹部,大腿部,腱断裂など)を用いた群(以下「刺傷群」とする)(n=21名)とを比較した。飛び降り群では,男性8名,女性15名と女性の割合が高かったが,刺傷群では男性14名,女性7名と男性の割合が高かった。今回の調査では,飛び降り群より,刃物による重篤な自傷群において,男性の比率がより高い傾向にあることが明らかとなった。また,両群ともに全体統計と比べ内因性精神障害(ICD-10診断のF2+F3)の割合が高い傾向にあった。 自殺企図の要因についてF2圏に注目してみると,飛び降り群(n=7)では自殺企図の要因として,心理社会的要因が半数を占めるのに対して,刺傷群(n=5)では全例とも幻覚妄想状態による自殺企図であることがわかった。刺傷という手段は飛び降りと比べ,より幻覚妄想に親和性の高い企図手段である可能性がある。

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© 2012 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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