総合病院精神医学
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リスペリドン投与中のせん妄患者における鎮静の遷延と腎機能との関連についての検討
土田 和生小髙 辰也原田 智子岡部 健雄徳増 裕宣
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2016 年 28 巻 2 号 p. 167-173

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抄録

リスペリドン(RIS)およびその活性代謝物の排泄は,腎臓病の患者で低下していることが報告されており,腎機能が低下した患者では,RIS投与中に鎮静状態が遷延する可能性がある。今回われわれは,2013年1月から2014年10月の間に,せん妄治療のためにRISを投与された入院患者において,鎮静遷延状態の出現と腎機能の関連について調査した。腎機能は,血清クレアチニン (Cr)値,推算糸球体濾過量(eGFR),推算クレアチニン・クリアランス(CCr)で評価した。対象者84名中,RIS投与中に鎮静遷延状態が出現しなかった患者は69名(82%)であった。Cr値が正常域であった患者では,68名中60名が鎮静遷延状態を認めなかった(感度87.0%,特異度46.7%)。 eGFR値≧60ml/min/1.73m2かつ推算CCr値≧50ml/minの患者では,53名中48名が鎮静遷延状態を認めなかった(感度69.6%,特異度66.7%)。eGFR値≧90ml/min/1.73m2かつ推算CCr値≧80ml/minの患者では,17名中鎮静遷延状態を認めた患者はいなかった(感度24.6%,特異度100%)。この研究結果から,Cr値,eGFR値および推算CCr値を参考にすることで,RIS投与中に鎮静状態が遷延するハイリスク患者を把握できる可能性が示唆されたと思われる。

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© 2016 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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