総合病院精神医学
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症例
地域で対応困難であったPTSDの若年女性に対する総合病院精神医学的アプローチ
田宗 秀隆熊倉 陽介菊地 良直森田 進谷口 豪近藤 伸介笠井 清登
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2016 年 28 巻 4 号 p. 353-360

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抄録

解離症状を伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)に高血糖性の意識障害が重畳した1 例を経験した。症例は,幼少期より母から虐待を受け,養育環境が恵まれなかった軽度知的障害の24歳女性。16歳で糖尿病を発症しインスリン依存状態であった。注射針が母の虐待を想起させ解離を惹起したため,インスリン管理が困難で血糖はコントロール不良であった。このため地域生活が危ぶまれ,総合病院入院で立て直すこととなった。血糖測定とインスリン注射を拒否した際,脳波は不規則なα波に著明なδ波の混入を認め,高血糖性の軽度意識障害の重畳が示唆された。経口血糖降下薬metformin 併用で血糖値が改善するにつれ,意識障害に起因する精神症状は消退し,インスリン離脱および精神症状のさらなる改善が期待できるまでに至った。地域と総合病院の連携では個別化医療を意識し,総合病院精神科医がcommon disease の最新知識をもち,本人の能力,社会資源を総合的に考慮することが求められる。

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© 2016 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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