総合病院精神医学
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28 巻, 4 号
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特集:コンサルテーション活動におけるモデルとスキル
総説
  • 平井 啓
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 4 号 p. 310-317
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    総合病院におけるサイコオンコロジーなどの身体疾患の領域において,患者や家族の精神医学的・心理学的問題への対応は必須であり,メンタルヘルスの専門家のコンサルテーションによる対応が求められる。精神・心理的コンサルテーション(psychiatric and psychological consultation)は,一般的なコンサルテーションと同様にコンサルタントとコンサルティからなる構造があり,そのなかで,問題解決プロセスに準じて,患者と家族の問題や,コンサルティの課題について包括的アセスメントを行い,それに基づく仮説構築と仮説に対する解決策を考え,それらをコンサルティに提示し,コンサルティと協働で事例の問題解決を進めていくものである。本論では,精神・心理的コンサルテーションの背景となっているコンサルテーション,包括的アセスメント,問題解決技法などの概念について整理を行い,特にコンサルタントに求められるスキルという観点から,この精神・心理的コンサルテーション活動の構造と機能について明らかする。。

総説
  • 上村 恵一
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    総合病院における精神科医の重要な役割はコンサルテーション・リエゾンサービスの提供である。そもそも,コンサルテーションとは,異なる専門性をもつ複数の者が,援助対象である問題状況について検討し,よりよい援助の在り方について話し合うプロセスを指す。つまり,精神科におけるコンサルテーション・リエゾンサービスは異なる専門性をもつ主治医チームと精神科リエゾンチームが,援助対象である患者やその家族の問題状況について検討し,よりよい援助の在り方について話し合うプロセスと定義される。

    お互いの専門性を知るということは,相互の信頼関係作りにきわめて重要である。クライアントである患者,コンサルタントである精神科医自身を理解しようとすることが重要である。さらに行ったコンサルテーションの評価を行い,疾患に着目するのではなく,Bio-Psycho-Social な評価を行い,適切な職種介入を行うことが,効果的・効率的なコンサルテーションにつながる。

経験
  • 山内 典子
    原稿種別: 経験
    2016 年 28 巻 4 号 p. 324-331
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    一般病院の患者の精神ケアにおいて,看護師には,患者の日常生活上の安全や安心感を保証する治療的・発達促進的環境としての機能が求められる。しかし,看護師はその立場から,患者のニーズとそれに伴う身体的なリスクのバランスを考えることのジレンマに悩んだり,患者との関係性のなかで感情に巻き込まれることがある。リエゾン看護師は患者−看護師関係において,両者のストーリーの意味,両者間のストーリーのずれの意味の解釈から,看護師とともに患者の真のニーズや関係性を明らかにする。これは,コンサルテーションのプロセスでいう「隠れたニーズを引き出し」,「問題を明確化」する段階に相当し,全プロセスのなかで最も難しい作業である。本稿では,特にこの段階に焦点を当てたコンサルテーションのスキルについて経験に即して述べる。

総説
  • 小林 清香
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 4 号 p. 332-339
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    多職種が関与するコンサルテーション・リエゾン活動における心理職の役割や機能,実際の活動のためのポイントを整理した。心理職によるコンサルテーションは精神科医との連携を図り,精神医学的・心理学的アセスメントに基づいて行われる。臨床心理職は患者に対する心理療法のほか,コンサルティに対する助言や,医療者−患者・家族間,医療者間の関係調整も行う。コンサルテーションにおいて不可欠であるコンサルティとの協働体制を構築するうえで有用と考えられる,段階的ケア・モデルをはじめとするいくつかのモデルについて触れた。また,心理職による,認知行動モデルを用いたコンサルテーションの実際を紹介した。

一般投稿
総説
  • 岡田 剛史
    原稿種別: 総説
    2016 年 28 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    生体臓器移植ドナーには,臓器提供後にさまざまな精神・心理的問題が生じる。レシピエントとの「退行的共生関係」により,押しつけ,恩着せ,生み直し幻想,レシピエントの反動的突き放しなどが生じ,「ドナー選定をめぐる葛藤」からは家族内での孤立,周囲への隠された被害感,取り残され感などが生じる。さらに,身体的・経済的・社会的不安や,レシピエントへの贖罪感・罪責感から抑うつ状態を呈することもある。また,身体症状が精神・心理的問題に由来する心気症状である可能性も考える必要がある。いずれの問題も臓器提供前後で連続して生じるものであり,臓器提供前にドナー心理を語らせることは予防的に働く。一方で,臓器提供後に精神・心理的問題を生じるドナーにおいては,移植前後を連続して診る身体科医師の視点は非常に重要であり,身体科医師とコンサルテーション・リエゾン担当精神科医師の適切な連携が重要である。

原著
  • 金原 明子, 山名 隼人, 康永 秀生, 松居 宏樹, 安藤 俊太郎, 岡村 毅, 熊倉 陽介, 伏見 清秀, 笠井 清登
    原稿種別: 原著
    2016 年 28 巻 4 号 p. 345-352
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    過量服薬が繰り返されることは,後の自殺完遂のリスクの強力な予測因子であるが,過量服薬患者に対する精神科介入について確固たる有効性は示されてこなかった。本研究では,救命救急センターに入院した過量服薬患者に対する精神科介入が再入院の減少と関連しているかについて調べることを目的とした。DPCデータ調査研究班のデータベースを用いて,過量服薬で救命救急センターに入院した患者(2010〜2012年度退院)を特定とした。患者の特徴・病院の特徴などの因子により介入群・非介入群間で傾向スコアマッチング法を行い,両群の再入院率を比較した。救命救急センターに入院した過量服薬患者25,564人が抽出され,うち13,035人が介入を受けていた。傾向スコアマッチング法により7,938ペアが抽出され,そのうち1,304人が再入院していた。再入院率は介入群で有意に低かった(介入群7.3%,非介入群9.1%,p<0.001)。本研究により,精神科介入は再入院率の低下と関連していることが示された。

症例
  • 田宗 秀隆, 熊倉 陽介, 菊地 良直, 森田 進, 谷口 豪, 近藤 伸介, 笠井 清登
    原稿種別: 症例
    2016 年 28 巻 4 号 p. 353-360
    発行日: 2016/10/15
    公開日: 2022/11/05
    ジャーナル フリー

    解離症状を伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)に高血糖性の意識障害が重畳した1 例を経験した。症例は,幼少期より母から虐待を受け,養育環境が恵まれなかった軽度知的障害の24歳女性。16歳で糖尿病を発症しインスリン依存状態であった。注射針が母の虐待を想起させ解離を惹起したため,インスリン管理が困難で血糖はコントロール不良であった。このため地域生活が危ぶまれ,総合病院入院で立て直すこととなった。血糖測定とインスリン注射を拒否した際,脳波は不規則なα波に著明なδ波の混入を認め,高血糖性の軽度意識障害の重畳が示唆された。経口血糖降下薬metformin 併用で血糖値が改善するにつれ,意識障害に起因する精神症状は消退し,インスリン離脱および精神症状のさらなる改善が期待できるまでに至った。地域と総合病院の連携では個別化医療を意識し,総合病院精神科医がcommon disease の最新知識をもち,本人の能力,社会資源を総合的に考慮することが求められる。

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