総合病院精神医学
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原著
精神科入院患者の幼少期の困難な体験の体験率および関連因子に関する検討
工藤 紗弓和田 一郎和田 久美子小西 聖子
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2017 年 29 巻 2 号 p. 152-162

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抄録

トラウマ体験を含む幼少期の困難な体験(Adverse Childhood Experiences:ACE)は長期的でネガティブな影響を与える。精神科入院治療中の患者53名,平均年齢53.1歳のACE体験率および累積数を調査した。また,ACE累積数と精神疾患発症時期について検討した。ACEは親の離婚あるいは別居,虐待など計8項目について尋ねた自記式のチェックリストを用い,ベースラインおよび10〜14週後の2回調査を行った。
診断はF2統合失調症・統合失調症型障害及び妄想性障害(67.9%),次いでF3気分(感情)障害 (17.0%)であった。1つ以上ACEを体験した者は58.5%,平均累積数は1.2であった。また,ACEの有無および累積数について,ベースラインと再調査の比較において高い割合で一致していた(κ=0.87,κ=0.73)。さらに,ACEの有無による2 群比較では,ACEあり群のほうが初診年齢および入院初回年齢が低かった。このような結果は諸外国の先行研究と一致するものであり,日常の臨床活動においてACEの影響を考慮したアセスメントを行うことは重要である。

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© 2017 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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