2017 年 29 巻 3 号 p. 271-279
精神疾患と生活習慣病は互いにそれぞれの重要な危険因子である。今回,統合失調症と2型糖尿病を合併した50歳代女性を経験した。兄への他害による措置入院時HbA1c 11.7%,随時血糖323mg/dLであり,risperidoneを主剤に薬剤調整した。インスリン投与を受けていた患者は,持効性注射剤の導入の提案を抵抗なく受け入れた。訪問看護師による見守りの下,週1回投与型DPP-4阻害薬trelagliptinを併用(後に週1回投与型GLP-1アナログdulaglutideに変更)し,2週間ごとに通院同行サービスを用いて外来通院する構造設定で,精神症状の再燃なく身体的にも健康で,患者の望む絵画・料理の余暇が楽しめている。服薬アドヒアランスが安定しなければ,精神症状も血糖も安定は難しい。現在,抗精神病薬の持効性製剤のみならず,血糖降下薬も持効性製剤が上市されている。リスクを回避し,リカバリーを促進するにあたり,内科医や地域支援者との連携など,総合病院精神科医の果たす役割は大きいものと考えられる。