総合病院精神医学
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29 巻, 3 号
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特集:総合病院精神医学における心理職育成の実践と課題
総説
  • ─精神科医の立場から─
    赤穂 理絵
    原稿種別: 総説
    2017 年 29 巻 3 号 p. 222-228
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    公認心理師法公布とチーム医療推進によって,総合病院に勤務する心理職の増加が期待される。本稿では,総合病院において心理職に求められる業務と,総合病院での業務遂行のために重要と思われる学習項目についてまとめた。総合病院で心理職に求められる業務は,精神科外来・病棟における心理検査,心理療法,心理教育のみならず,リエゾンコンサルテーションにおける心理的介入,スタッフのメンタルケア,心理相談など多岐にわたっている。なかでも近年は,精神科リエゾンチームをはじめとする,様々なチーム医療への参加が要請されている。このような総合病院における業務を遂行するためには,主要な精神疾患についての学習はもとより,総合病院で対象とすることの多い器質性・症状性精神障害について特に学んでもらいたい。また,総合病院という医療機関の枠組みを理解し,他の医療職種との連携・協働についての学習も必要と考える。

総説
  • ─養成教育と精神科医の現状との対比を中心に─
    津川 律子, 小林 清香
    原稿種別: 総説
    2017 年 29 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    日本における心理専門職の養成カリキュラムの特徴を整理し,その現況を精神科医と対比しながら整理した。医師は自然科学系の養成教育を受けるのに対し,心理専門職は人文社会科学系の教育を受け,大学院教育のなかで医療系科目を選択し,精神科医療現場で診察陪席,集団療法,心理査定などの実習を経験する。既存のデータでは,精神科医の約80%が男性で,90%以上が医療機関に勤務しているのに対し,臨床心理士は約80%が女性であり,医療・保健領域を主たる勤務先とする者は30%弱で,多くの心理専門職が医療以外の領域で働いているということも特徴的である。2015年9月の公認心理師法公布により,医学や精神医学に関する科目の必修化が予想され,また本法で公認心理師は関係職種と連携を保つことが定められている。精神科医と心理専門職の連携・協働がこれまで以上に豊かとなり,総合病院においても多職種協働の一員として心理専門職が貢献できる未来を期待したい。

経験
  • ─精神科領域の力動的アセスメントを身体科領域に応用して─
    古井 由美子, 大島 良江, 佐藤 友里, 酒井 玲子, 富安 哲也, 花村 温子
    原稿種別: 経験
    2017 年 29 巻 3 号 p. 236-242
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    総合病院における身体科領域の心理業務は増加している。当院でも身体科領域の心理業務がこの10年で拡大した。しかし,身体科領域における心理職の教育・研修法はまだ整備されていない。 当院では身体科領域での心理職の育成については,精神科領域における心理職の育成方法を応用し,構築した。よって,当院の育成法を紹介することで,今後の身体科領域における教育・研修法整備の一助になればと考えた。さらに身体科領域の事例を提示し,その心理支援の複雑さを示した。どのような心理支援においても,力動的アセスメントが有用であった。そのため当院における心理職の育成では,身体科領域に関わる場合には精神科領域の1 対1 の面接のなかで力動的アセスメントを身につけることを基本にしている。またコンサルテーション業務については,専門家としての知識・技法・態度を学ぶ必要があり,特に態度は先輩心理職に同行して観察して学ぶ以外にないと思われた。

経験
  • 冨岡 直, 満田 大, 中嶋 義文
    原稿種別: 経験
    2017 年 29 巻 3 号 p. 243-251
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    総合病院・身体科医療領域における心理職の教育・研修制度は整備途上にあるが,心理職の育成は急務である。当院ではコンサルテーション・リエゾン(CL)活動の実践に重きを置いた心理インターンシップ制度を続けており,その変遷から当該領域における実践型プログラムのあり方について考察した。プログラムの実施にあたり,CL活動におけるコア・コンピテンシーは①多角的理解力, ②力動理解と協働能力,③疎通困難な患者との疎通能力と考えられた。これらの能力の習得には少なくとも480時間が必要であり,実践型プログラムにより多角的理解力と疎通能力は習得可能であったが,協働能力にはさらなる時間と経験が必要であると思われた。実践型プログラムの実施においてはCL特有の構造の複雑さやリスクマネジメントに留意する必要がある。今後は指導者の質の担保も課題となるが,実践型プログラムが即戦力のある人材の育成につながることが期待される。

経験
  • 高野 公輔, 相川 祐里
    原稿種別: 経験
    2017 年 29 巻 3 号 p. 252-261
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    コンサルテーション・リエゾン(consultation liaison:CL)に関わる心理職の増加が期待されるが,心理職養成教育ではCLを学ぶ機会が限られている。本稿では,A病院の大学院生対象CL実習プログラムを紹介し,その実践と効果,今後の課題について述べた。プログラム構築では,アウトカム基盤型教育を取り入れ,到達目標設定,実習キャリアラダー作成,実習内容・実習期間・実習生評価などの設定を行った。実習効果として,CL特有の面接構造を理解し,身体疾患を抱えた患者のアセスメントを習得することができた。また,CLにおける心理職の役割やチーム医療ついて体験的理解が積み重ねられた。課題として,実践的な実習プログラムの構築,実習指導者の養成,大学院との連携,現場の負担があげられる。CL領域の心理職が患者,患者家族,医療スタッフのニーズに適い,医療全体に役立つためには,養成教育から卒後教育への一貫した教育・研修体制を整備する必要があると考える。

一般投稿
総説
  • 川島 義高, 稲垣 正俊, 米本 直裕, 山田 光彦
    原稿種別: 総説
    2017 年 29 巻 3 号 p. 262-270
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    本稿では,わが国の救急医療機関における自殺未遂者ケアの現状と課題について整理した。 わが国では救急医療機関に入院した患者の約5%が自殺未遂者であると推定され,自殺未遂者は気分障害をはじめとした精神疾患に罹患している割合が高いことが筆者らのメタ解析により示されている。一方,多施設共同ランダム化比較試験(ACTION-J研究)により,精神疾患を有する自殺未遂者の再企図をケース・マネージメントによって軽減できることが明らかとなっている。このケース・マネージメントを適切に実施するためには,救急部門と精神科部門との連携が不可欠であるが,わが国では両部門の連携が図れている施設は限られている。今後,エビデンスに基づいた自殺未遂者ケアを普及させるためには,両部門の連携を強化し,自殺未遂者に対して適切なケアを提供できる体制を構築する必要がある。

症例
  • 田宗 秀隆, 百瀬 崇, 玉井 眞一郎, 辻野 元祥, 成島 健二, 山本 直樹
    原稿種別: 症例
    2017 年 29 巻 3 号 p. 271-279
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル フリー

    精神疾患と生活習慣病は互いにそれぞれの重要な危険因子である。今回,統合失調症と2型糖尿病を合併した50歳代女性を経験した。兄への他害による措置入院時HbA1c 11.7%,随時血糖323mg/dLであり,risperidoneを主剤に薬剤調整した。インスリン投与を受けていた患者は,持効性注射剤の導入の提案を抵抗なく受け入れた。訪問看護師による見守りの下,週1回投与型DPP-4阻害薬trelagliptinを併用(後に週1回投与型GLP-1アナログdulaglutideに変更)し,2週間ごとに通院同行サービスを用いて外来通院する構造設定で,精神症状の再燃なく身体的にも健康で,患者の望む絵画・料理の余暇が楽しめている。服薬アドヒアランスが安定しなければ,精神症状も血糖も安定は難しい。現在,抗精神病薬の持効性製剤のみならず,血糖降下薬も持効性製剤が上市されている。リスクを回避し,リカバリーを促進するにあたり,内科医や地域支援者との連携など,総合病院精神科医の果たす役割は大きいものと考えられる。

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