2020 年 32 巻 3 号 p. 262-267
アルコール依存症専門医療機関である単科精神科病院の精神科医が,総合病院でのアルコールリエゾン診療を開始した。1カ月に2日,外来患者および入院患者のうちコンサルトを受けた患者を診察し,アルコール依存症と診断した患者には専門医療機関への紹介を念頭に動機づけ面接を行う。本研究はリエゾン診療開始後1年間の症例集積研究である。47名の外来患者,30名の入院患者を診察した。診察した入院患者のAUDITの平均点は22.5点,依存症に至る患者は21人(70%),そのうち専門医療機関へ紹介となった患者は14人(67%)であった。リエゾン診療開始により専門医療機関へのアルコール依存症患者の紹介受診数は12人から25人と2倍以上に増加した。アルコール依存症専門医療機関から総合病院への出張リエゾン診療により,治療につながるアルコール依存症患者が増加する可能性があり,アルコール依存症治療のトリートメントギャップを小さくするための1つの手段になり得る。