総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
症例
全身状態悪化に伴う好中球減少症から回復後に,クロザピンを再投与できた統合失調症症例
菊地 佑樹佐久間 篤若栗 碧子富田 博秋
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 32 巻 4 号 p. 417-422

詳細
抄録

好中球減少症によりクロザピン投与中止から再投与を行った症例を経験した。45歳男性。X−23年に統合失調症と診断され治療抵抗性で入退院を繰り返した。X−8年にクロザピンが導入され,精神病症状が改善した。X年Y月入院中に誤嚥性肺炎を発症した。Y+1月に白血球3,600/mm3,好中球1,370/mm3と中止基準に抵触しクロザピンが中止された。中止後から精神病症状が悪化し,精神運動興奮,易刺激性,拒絶,拒食が出現し,身体拘束や経管栄養を要する状態が持続した。複数の抗精神病薬を使用したが改善に乏しく,Y+5月にクロザリル適正使用委員会承認の下,クロザピンを再投与した。再開後は精神症状が改善し行動制限も不要となり,その後,好中球減少症の再発なく経過している。本症例の好中球減少症の原因を多角的に検討すると,クロザピンによる好中球減少症の可能性は否定された。好中球減少症は肺炎により全身状態が悪化した結果と考えられ,精神病症状に有効だったクロザピンを再投与することは適当であると判断された。原因が解明されないままクロザピンが治療の選択肢から外されると,患者が治療の利益を得られないおそれがあり,本邦でもこうした症例を集積していく必要がある。

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
前の記事
feedback
Top