総合病院精神医学
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症例
ストレス関連障害として加療されていた複合型遺伝性痙性対麻痺の1例
深尾 貴志竹之下 慎太郎藤原 雅樹佐藤 恒太寺田 整司山田 了士
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2020 年 32 巻 4 号 p. 410-416

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抄録

遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia;HSP)は,遺伝的原因から進行性に痙性対麻痺を生じる脊髄神経変性疾患の一群である。臨床症状によって,痙性対麻痺のみを呈する純粋型HSPと,これに知的障害など他の症状を伴う複合型HSPに分類される。今回われわれは,当初はストレスに関連した精神障害として加療されていたが,痙性麻痺が顕在化して複合型HSP疑いと診断された,知的障害のある33歳女性の症例を経験したので報告する。HSPに生じる精神症状として,統合失調症圏や気分障害圏の症状の報告が多い。経過中,幻視や妄想は再燃を繰り返したが,olanzapineなどの抗精神病薬が奏効した。知的障害をもつ例や精神症状を呈する例が進行性の歩行障害を伴う場合には,複合型HSPの可能性を念頭において診断を進める必要がある。

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© 2020 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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