総合病院精神医学
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症例
炭酸リチウムの併用下で急性腎障害を呈したクロザピン治療例2 例
小池 香赤田 弘一齋賀 孝久佐藤 茂樹
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2021 年 33 巻 4 号 p. 438-444

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抄録

近年,治療抵抗性統合失調症治療薬であるクロザピンの普及に伴い,単科精神病院でクロザピン治療中の患者に種々の副作用が生じ,有床総合病院精神科である当科へ転院する症例が増加している。今回クロザピンと炭酸リチウムの併用下で急性腎障害を呈し,当科へ転院となった2症例について報告した。急性腎障害の原因は,1例は炭酸リチウムによる尿崩症によるものであり,もう1 例はクロザピンによる急性間質性腎炎によるものであった。治療抵抗性の統合失調症の患者は気分変動を伴うことも多いことから,今後クロザピンのさらなる普及に伴いクロザピンと炭酸リチウムの併用症例も増えていく可能性がある。その際には腎機能障害が起きる可能性も念頭におき,腎機能についても適宜モニタリングし,併用の有効性と安全性を考慮して使用していく必要があると考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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