2025 年 37 巻 1 号 p. 6-12
てんかんにおけるプレコンセプションケア(PCC)は意思決定を支援し母子の予後を改善する。PCCで提供する情報には,てんかんが妊娠経過に及ぼす影響,遺伝に関する情報,抗てんかん発作薬と妊娠や授乳の関連などがある。本稿ではてんかんのPCCについて概観し,情報提供の結果第2子の妊娠につながった事例を提示する。症例は10歳代女性。12歳発症の焦点てんかんで通院は不規則であった。X年10月発作コントロール悪化のため再初診しゾニサミドの処方を継続したが,再度通院が途絶え,X+1年6月に妊娠と内服中断が報告された。そこで両親・本人にてんかんと妊娠に関する説明を行い,内服再開で合意した。X+2年1月に第1子を出産し,その後も安定して経過,11月に第2子妊娠の報告がありX+3年7月に出産となった。本症例では,情報提供が第2子妊娠に向けた不安軽減やてんかん治療におけるアドヒアランス改善につながったと考える。