2025 年 37 巻 2 号 p. 105-113
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)は機能的文脈主義という科学哲学と行動分析学に基づく心理療法で,苦痛で望まない内的体験を受け入れつつ個人の価値に沿った行動を選びやすくすることを目的とする。コンサルテーション・リエゾン精神医学(CLP)では,様々な精神医学的および身体的問題を抱えた患者に,他の診療科の医師や多職種と協力して対応する必要がある。ACTは診断横断的な特徴をもち,精神疾患の治療だけでなく,身体疾患の診療や健康を害する行動への介入としても有効なため,CLPで遭遇する多くの疾患や病態に対応できる。また,ACTの背景にある機能的文脈主義の視点から治療環境を理解し,医療スタッフの共通の目標を明らかにすることで,多職種からなる医療チームの効果的な介入を支援することができる。CLPでは限られた時間と回数で介入する必要があるが,焦点を絞ってACTを実施することでそれが可能となる。