抄録
消化管原発の悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma;以下,MFH)はまれな疾患である.なかでも,炎症性悪性線維性組織球腫(Inflammatory MFH)は報告例も非常に少ない.今回,我々は十二指腸原発Inflammatory MFHの1例を経験した.症例は60歳の男性で,右季肋部腫瘤にて紹介された.白血球数25,700/μl,granulocyte colony-stimulating factor(以下,G-CSF)=156 pg/mlと高値を示し,画像診断で十二指腸腫瘍と診断され,G-CSF産生十二指腸腫瘍疑いとして右半結腸切除術,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断でInflammatory MFH,免疫染色検査で腫瘍細胞の細胞質内にG-CSFを認め,十二指腸原発G-CSF産生炎症性悪性線維性組織球腫と診断された.術後5年経過するが,再発は認めていない.文献的考察を含めて症例報告する.