抄録
患者は70歳代の女性で,既往歴は15年前に生体腎移植目的に左腎摘出術を施行されている.全身倦怠感あり近医受診,肝機能異常を指摘され当院紹介となった.CTおよびendoscopic retrograde cholangiopancreatography(以下,ERCP)で肝門部胆管癌と診断され,左肝管は臍部まで,右肝管は前区域枝の分岐部まで腫瘍の浸潤を認めた.根治切除には3区域切除が必要で,肝予備能不良のため切除は断念した.30 Gy/15回の体外照射による放射線療法を行い,ERCPで腫瘍の縮小を認め,前後区域枝の分岐部で切離すれば胆管断端は陰性となると診断した.放射線療法終了2か月後に肝左葉切除を行った.病理組織学的検査で,左右肝管合流部に腫瘍の残存を認めたが,断端はすべて陰性であった.術後経過良好で,術後16病日に退院,術後8か月目の現在も無再発生存中である.術前放射線療法は,肝門部胆管癌の手術適応拡大に有用であると考えられた.