日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
浸潤性増殖およびリンパ節転移を伴っていた漿液性嚢胞腺癌の1例
湯浅 吉夫角 重信中光 篤志今村 祐司永田 秀之香山 茂平羽田野 直人臺丸 裕
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2009 年 42 巻 8 号 p. 1419-1423

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抄録

 従来,漿液性嚢胞腺腫は悪性化せず,予後良好な疾患と考えられてきた.しかし今回,我々は浸潤性増殖およびリンパ節転移を伴っていた漿液性嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で,平成18年2月,健診目的のCTで膵尾部に腫瘤性病変を指摘され,精査目的で当院紹介となった.MRIではT1W1Iで低吸収域,T2WIで高吸収域に描出される4.0×3.5 cm大の多房性嚢胞を認め,造影Dynamic MRIでは嚢胞壁は造影されていた.画像上,粘液性嚢胞腺腫なども否定できないと判断し,平成18年3月,膵尾部切除術を施行した.組織像では,嚢胞壁は胞体が淡明な扁平もしくは円柱状上皮で覆われており,核異型は軽度であったものの,周囲リンパ節への転移および脂肪織への浸潤性増殖を認めたため,漿液性嚢胞腺癌と診断した.術後2年経過した現在のところ,再発兆候は認められていない.

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