日本消化器外科学会雑誌
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原著
肝切除後におけるドレーン挿入必要例の検討
廣川 文鋭林 道廣宮本 好晴岩本 充彦朝隈 光弘米田 浩二清水 徹之介井上 善博谷川 允彦
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2010 年 43 巻 12 号 p. 1197-1204

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抄録

 はじめに:肝切除術後の予防的ドレナージの有用性を否定している論文が多いにもかかわらず,依然多数の施設で挿入されている.今回,自験例をもとにドレーン挿入の是非と必要例について検討した.対象と方法:2001年5月から2009年10月までの胆道・消化管吻合のない肝切除術でドレーンを挿入した259例をDrainage群(以下,D群),ドレーンを挿入しなかった118例をNon drainage群(以下,ND群)とし,術後合併症頻度をretrospectiveに比較した.さらに,術後胆汁漏症例とND群の術後ドレーン挿入例から,ドレーン挿入必要例を検討した.結果:術後合併症は,創感染のみND群で5.9%とD群の13.5%に比べ有意に低く,術後入院日数もND群が12日と,D群18日に比べ短かった.ND群の術後早期ドレーン挿入例は,肝不全を併発した3例であった.また,術後胆汁漏発生の危険因子は,再肝切除,主要Glisson鞘の露出術式(中央2区域・前区域切除)と術中胆汁漏が同定されたが,胆汁漏発生日が術後19.5日と遅かった.まとめ:胆道再建などを伴わない肝切除後は,全例にドレーンを留置する必要はなく,肝不全発症予知の点からは門脈腫瘍栓を伴う大量肝切除症例や,術後胆汁漏の点からは中央2区域・前区域切除あるいは再肝切除で術中胆汁漏を認めた症例に予防的なドレーン挿入が有用である可能性が示唆された.

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