2010 年 43 巻 12 号 p. 1240-1245
症例は62歳の男性で,B型慢性肝炎のfollow up CTにて肝S8に腫瘤を指摘され,当科を紹介受診・入院となった.入院時検査にてHBs-Ag(+),HCV-Ab(−)であり,腫瘍マーカーはAFP・PIVKA-IIともに上昇を認めた.画像診断と合わせて肝細胞癌の診断にて肝前区域切除を施行した.病理所見は腫瘤の多くは異型の強い核を持つ多形性~紡錘形の細胞が混在して増殖する肉腫様の組織と,その周囲の細胆管類似の管腔形態を示す組織であり,肉腫様変化を示した細胆管癌と診断した.術後経過は良好で通常通りに退院したが,術後3か月頃より残肝再発,傍大動脈リンパ節腫大を認め,肝不全により術後4か月で死亡した.肉腫様変化を伴う胆管癌はまれであり,さらに細胆管癌もまたまれな疾患である.その両者が混在した貴重な症例を経験したので報告した.