日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
膵頭十二指腸切除を残膵非再建で施行しえ血糖管理も安定した膵体尾部脂肪置換の1例
松川 啓義塩崎 滋弘高倉 範尚渡邉 佑介大野 聡小島 康知原野 雅生西崎 正彦丁田 泰宏二宮 基樹
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2010 年 43 巻 12 号 p. 1258-1263

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抄録

 症例は75歳の女性で,糖尿病のコントロールが不良となりCTを施行され膵頭部に嚢胞性腫瘤を指摘された.MRI,EUS,ERCPにて混合型の膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断した.加えて,膵体尾部に相当する部位は脂肪組織のみで実質組織はみられず膵体尾部脂肪置換を伴っていた.膵管造影で主膵管は体部で途絶していた.膵体尾部脂肪置換を伴った膵管内乳頭粘液性腫瘍に対して膵頭十二指腸切除を施行した.肉眼的に膵体尾部に一致する部位に実質組織はなく肥厚した脂肪組織のみで残膵は再建せず空置した.術後インスリンでの血糖コントロールは良好であった.組織学的に膵管内乳頭粘液性腺腫と診断され,また脂肪置換した膵切離断端にはランゲルハンス氏島の残存が確認された.膵体尾部脂肪置換に対する膵頭十二指腸切除は,脂肪置換組織内のランゲルハンス氏島の残存により膵全摘に比べ血糖コントロールに難渋することなく安全に施行しうると考えられた.

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