日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
胆管内進展を呈した膵腺房細胞癌の1例
松井 芳夫矢野 和仁田村 洋一郎影山 隆久
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2010 年 43 巻 12 号 p. 1264-1269

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抄録

 症例は67歳の男性で,食欲不振と体重減少を訴え,精査目的で当院紹介となった.血液生化学検査では,高度の肝機能障害と黄疸を認めた.腹部超音波検査で総胆管の拡張と,胆管内に占居性病変を認めた.腹部MRIで膵頭部に約2 cm大のT1で低信号,T2で高信号の病変と,magnetic resonance cholangiopancreatography(以下,MRCP)では下部胆管に隆起性の欠損像を認めた.腹部血管造影検査で膵頭部に腫瘍濃染を認めたが,周囲血管の明らかなencasementは認めなかった.以上より,下部胆管に占居性病変を伴った膵頭部悪性腫瘍の診断で,膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本にて胆管内に腫瘍塊を認めた.病理組織学的所見は腫瘍細胞が腺房様構造を示しながら周囲膵実質組織を圧排するように膨張性に発育していた.胆管内腫瘍も膵頭部腫瘍と同様の組織型を呈していた.免疫染色検査でトリプシン強陽性,リパーゼ弱陽性との免疫性状を呈し,膵腺房細胞癌と診断された.

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