2010 年 43 巻 12 号 p. 1270-1275
膵癌の3大再発様式は肝転移,局所再発,腹膜播種であるが,肺転移の臨床的特徴や治療については明らかではない.免疫組織学的に証明された孤立性肺転移4例の臨床病理学的特徴とgemcitabine+TS-1併用療法(以下,GS療法)の意義について検討を加えた.4例とも初回膵切除後にgemcitabineが投与されていた.術後無再発生存期間は26~78か月であった.単発病変の2例は原発性肺癌,多発性の2例は転移が疑われ肺切除が施行された.全例において病理組織学的,免疫組織学的に肺転移と診断された.術後1例を除きGS療法が行われた.肺切除後の転帰は2例がおのおの36,14か月生存中で,2例がおのおの32,14か月に再発にて死亡した.膵癌治癒切除後の孤立性肺転移は比較的遅発性であり,肺切除後の化学療法により比較的長い生存期間が得られた.他の腹腔内再発様式と比較して生物学的悪性度が低い可能性が示唆された.