抄録
症例は44歳の女性で,右下腹部痛と発熱を主訴に来院した.CTでは下腹部正中に液面形成を伴う35mm大の憩室状の構造物を認め,糞石を伴っていた.腹腔内遊離ガスと骨盤内の腹水を認め,血液検査上高度の炎症所見を伴い,小腸の憩室炎穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹手術を施行した.Bauhin弁より50cmの回腸の腸間膜付着側に,10cmの管状,交通型の重複腸管があり,盲端が穿孔していた.重複腸管を含む回腸楔状切除術を行った.病理組織学的所見では回腸と連続した粘膜および筋層構造を認めた.盲端に高度の活動性炎症を認め,糞石の嵌頓による穿孔と考えられた.本邦における成人の回腸重複腸管の穿孔例を報告した文献は,自験例を加えて6例と極めてまれであるが,成人における急性腹症の鑑別疾患のひとつとして回腸重複腸管症を考慮する必要がある.