症例は52歳の女性で,腹痛,嘔吐にて当院受診した.血液検査では炎症反応は軽度,腹部CTにて拡張した腸管と,子宮右側に3cmの,不均一に造影される腫瘤および腹水を認め,USでは小腸と連続する腫瘍と思われた.MRIでも同様の所見であり,小腸腫瘍によるイレウスと診断,開腹手術を施行した.開腹すると回盲部から約10cmの小腸に灰白色充実性の腫瘍があり,近傍の腸間膜リンパ節の腫大を認めた.リンパ節転移を伴う小腸悪性腫瘍と判断し,近傍リンパ節郭清および末端回腸60cmを含む回盲部切除を施行した.病理結果では組織球肉腫(histiocytic sarcoma:以下,HS)の診断であった.術後FDG-PETにて全身の転移のないことを確認し,外来にて経過観察を行い,13か月の無再発生存を得ている.非常にまれな組織球肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.