2011 年 44 巻 6 号 p. 738-744
症例は20歳の男性で,小児期から腹部てんかんの診断で経過観察されていたが,2009年4月右上腹部痛を主訴に当院紹介となった.腹部造影CTで上腸間膜動脈の周囲を腸管が取り巻くwhirl-like patternを認め,CT-colonographyでは上行結腸の左方変位が認められた.上部消化管造影検査で十二指腸空腸移行部の位置異常を認め,腸回転異常症に伴う中腸軸捻転症と診断された.同時に下腹部に造影効果のない多房性の嚢胞性病変を認め,MRIでも嚢胞内に結節性病変を認めないことから,腸間膜嚢腫と診断した.腸管血流障害の可能性が低いことから,待機的に腹腔鏡下に空腸部分切除,Ladd手術および虫垂切除を施行した.病理組織検査で嚢胞性病変が空腸筋層まで連続し,腸間膜リンパ管腫と診断された.中腸軸捻転,腸間膜嚢腫に対する腹腔鏡下手術は,腸管の血流障害がない症例に対して安全で有効な手技と考えられる.