2012 年 45 巻 1 号 p. 30-37
Type 1胃カルチノイドの発生機序は,A型胃炎に伴う胃内低酸状態から幽門洞G細胞のガストリン産生が刺激され,このガストリンのtrophic actionにより胃底部から胃体上部に存在するEnterochromaffin-like(以下,ECLと略記)細胞が腫瘍化することによるとされている.今回,我々はType 1胃カルチノイドに対し幽門洞切除を行い,全腫瘍を消退しえた1例を経験したので報告する.症例は38歳の男性で,人間ドックの上部消化管内視鏡検査にて胃底部から胃体上部に,萎縮粘膜を背景に多発する小隆起性病変を認め,生検にてカルチノイドと診断された.抗胃壁細胞抗体陽性であり,高ガストリン血症も認め,Type 1胃カルチノイドと考え,胃機能温存を考慮し,幽門洞切除術を行った.術後血清ガストリン値は基準範囲内まで低下し,14か月目の上部内視鏡検査にて全腫瘍の消退を認め,その後も再発することなく4年間経過している.