2012 年 45 巻 5 号 p. 537-543
症例は81歳の女性で,大腸内視鏡検査で上行結腸肝彎曲部に全周性2型病変を認め,生検で中分化から低分化型腺癌と診断された.CTで同部の壁肥厚と,傍大動脈リンパ節転移,腹膜播種,多発肺転移を認め,腸閉塞予防目的に結腸右半切除術を施行した.術後,発熱,白血球増加,CRPの高値が持続したが感染源は指摘しえず.血中granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)濃度が124pg/mlと高値で,腫瘍部は免疫組織化学染色でG-CSFが弱陽性でありG-CSF産生結腸癌と診断した.FOLFOX4療法を6コース施行し多発リンパ節,肺転移は著明に縮小したが,多量の胸腹水貯留を認め,術後7か月で癌死した.G-CSF産生大腸癌の予後は不良であるが,FOLFOX4療法の有用性が示唆された.