2012 年 45 巻 6 号 p. 607-614
症例は47歳の男性で,下腸間膜静脈から右総腸骨静脈へと至る径40mmの門脈大循環シャントを認め,肝性脳症を繰り返していた.他施設で血管造影下にシャント閉鎖が試みられたが不成功であり,外科的閉鎖目的で当院に紹介された.術中門脈造影を行うとすべての腸間膜静脈血流がシャントへと流れ,肝内へ門脈血が流入しない状態であった.門脈圧は8mmHgであった.シャント血管をクランプすると門脈血流が求肝性となり,門脈圧の上昇は12mmHgまでにとどまることを確認,閉鎖可能と判断しシャント完全閉鎖を行った.血中アンモニア値は術翌日に正常化した.術後8か月現在,脳症の再発を認めていない.Interventional radiology手技にて閉鎖困難な門脈大循環シャント症例に対し外科的閉鎖術が有効なことがある.術中に門脈圧モニタリング,門脈造影,ドップラーエコーを行いシャント閉鎖の可否を判断することが重要である.