抄録
症例は78歳の男性で,胆石・胆囊炎にて紹介となった.2年前より腎不全にて持続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis;以下,CAPDと略記)中であったが,自尿は1,000 ml/日程度認められていた.手術当日の朝CAPD透析液を排出し手術室に入室,腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy;LC)を施行,創部は全て2層に密に閉創した.術後経過は良好で翌日から食事摂取を開始し,第3病日より半分の透析液量でCAPDを再開した.透析液量を漸増し,第5病日には通常量になったため血液透析(hemodialysis;以下,HDと略記)を施行することなく第6病日に退院となった.術後2年経過する現在まで合併症なくCAPDも順調に施行できている.CAPD患者においても,閉創法,透析液の開始量などの工夫を行えば,症例によっては術後HDを回避でき,早期にCAPDを再開できる可能性が示唆された.