抄録
術前化学放射線療法を施行し,根治切除術を施行した膵癌の3例を経験した.いずれの症例も主要動脈への腫瘍の浸潤が疑われ,切除境界病変と考え術前化学放射線療法を施行した.画像による術前治療の効果判定は有効(PR)から不変(SD)であったが,血管浸潤部は不変であった.3例とも開腹術に臨み,術中迅速病理検査で動脈剥離断端が癌陰性であることを確認し,門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理組織学的検査にていずれの症例も60%以上の腫瘍細胞の消失を認め,術直前の画像所見における腫瘍縮小効果との乖離がみられた.術前化学放射線療法は有望な治療であるが,術前治療後の画像所見における切除可能性の評価は容易ではなく,開腹術に臨まなければ切除可能症例を見逃す可能性が示唆された.