日本消化器外科学会雑誌
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46 巻, 2 号
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症例報告
  • 星野 伸晃, 加藤 岳人, 平松 和洋
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 85-90
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     Gardner症候群に伴う後腹膜デスモイド腫瘍に対して施行された胃全摘術後23年目に,十二指腸球部盲端に腺癌が発症した症例を経験した.胃全摘後の盲端となった十二指腸球部癌の本邦報告例はなく,非常にまれであるため報告する.症例は57歳の女性で,26年前に家族性大腸腺腫症に対し大腸全摘を受け,23年前に後腹膜デスモイド腫瘍に対し胃全摘,Roux-en-Y再建の既往があり,このときGardner症候群と診断された.2010年9月に上腹部に腫瘤を触知し,CTでその腫瘤は37 mm大で十二指腸盲端と連続していた.2010年10月に手術を施行し,十二指腸球部に発症した腫瘤は肝臓・膵頭部・総胆管・腹壁に浸潤していたが完全摘出した.摘出標本で十二指腸球部盲端に2型の腫瘍を認め,病理組織学的検査では中分化腺癌であった.術後8か月現在,肝転移が出現し化学療法を施行している.
  • 大石 康介, 坂口 孝宣, 稲葉 圭介, 森田 剛文, 鈴木 淳司, 福本 和彦, 馬場 聡, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 91-97
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は75歳の男性で,2004年2月,肝外側区域および後区域のKlebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の敗血症性ショックで他院に入院した.抗生剤投与により膿瘍は縮小し,全身状態は改善した.10か月後に膿瘍は消失し,経過観察中止となった.2007年1月の検診にて肝胆道系酵素上昇を指摘され,腹部超音波検査,CTで以前の肝膿瘍存在部位に一致する肝外側区域に6 cm大の腫瘍を認めた.肝炎ウイルス検査は陰性であったが,血清AFP値は上昇していた.厚い不整な被膜の内部に隔壁を有する画像検査所見より,混合型肝癌と診断して肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では多結節癒合型の肝細胞癌で,腫瘍辺縁部に肉芽細胞や異物巨細胞を含む炎症性瘢痕組織がみられ,以前膿瘍が存在した部位に肝細胞癌が顕在化したものと考えられた.発生原因が不明な肝膿瘍では治癒後も定期的な経過観察が重要である.
  • 前平 博充, 杉浦 禎一, 長尾 厚樹, 木内 亮太, 岡村 行泰, 水野 隆史, 金本 秀行, 佐々木 恵子, 寺島 雅典, 上坂 克彦
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 98-105
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は79歳の女性で,食思不振,体重減少,褐色尿を主訴に近医受診し,黄疸と胆管拡張を指摘され,当院を受診した.腹部超音波,腹部造影CTおよびERCPで門脈腫瘍栓を伴う肝外胆管癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,門脈腫瘍栓摘出術,門脈合併切除再建を施行した.病理組織学的検査では,腺癌と扁平上皮癌の混在を認め腺扁平上皮癌と診断した.また,胆管病変と連続しない膵頭部の分枝膵管内に上皮内癌を認め,胆管癌と膵癌の同時性重複癌と診断した.術後経過は2か月目に多発肝転移,リンパ節再発を認め,術後4か月目に永眠された.極めてまれな,著明な門脈腫瘍栓を形成した肝外胆管原発腺扁平上皮癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 末永 雅也, 藤井 努, 山田 豪, 奥村 徳夫, 竹田 伸, 中尾 昭公, 小寺 泰弘
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 106-113
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     術前化学放射線療法を施行し,根治切除術を施行した膵癌の3例を経験した.いずれの症例も主要動脈への腫瘍の浸潤が疑われ,切除境界病変と考え術前化学放射線療法を施行した.画像による術前治療の効果判定は有効(PR)から不変(SD)であったが,血管浸潤部は不変であった.3例とも開腹術に臨み,術中迅速病理検査で動脈剥離断端が癌陰性であることを確認し,門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理組織学的検査にていずれの症例も60%以上の腫瘍細胞の消失を認め,術直前の画像所見における腫瘍縮小効果との乖離がみられた.術前化学放射線療法は有望な治療であるが,術前治療後の画像所見における切除可能性の評価は容易ではなく,開腹術に臨まなければ切除可能症例を見逃す可能性が示唆された.
  • 三好 永展, 丹野 弘晃, 向田 和明, 大塩 博, 安西 良一, 遠藤 公人
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 114-121
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は49歳の男性で,発熱と左下腹部に軽度の腹膜刺激徴候を伴う限局した圧痛を認め,精査・加療目的に当科紹介となった.血液検査では高度の炎症反応を示し,腹部造影CTで上部空腸に隣接して腸間膜側へ突出する径2.5 cm大の気体を含んだ腫瘤を認めた.腫瘤は壁を有する部分と壁を欠く部分より成り,小腸憩室穿通による腸間膜膿瘍の診断で直ちに手術を施行した.Treitz靱帯から約70 cmの空腸憩室が腸間膜に穿通し膿瘍を形成していた.膿瘍腔を含めた腸間膜と小腸を一塊にして小腸部分切除術を施行した.病理組織学的診断は憩室炎を契機にした仮性憩室の穿通であった.術後経過は問題なく,15日目に退院した.小腸憩室穿通による腸間膜膿瘍はまれで術前に診断が困難であることが多いが,腹部CT所見が切除標本の病理組織学的検査と非常によく一致し,術前診断に有用であった.
  • 三浦 世樹, 川本 潤, 深田 忠臣
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 122-129
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は83歳の男性で,虫垂切除術の既往があり,健康診断で便潜血陽性を指摘され当科を受診した.下部消化管内視鏡,注腸造影で回盲弁を基部とした30 mm大の腫瘤を認めた.生検の結果正常粘膜の所見で,lipohyperplasiaと診断し経過観察していたが,6か月後に再度便潜血陽性となり,便通異常,軽度の右下腹部痛が出現した.CTでは回盲部腫瘤はfat densityに描出され,回腸末端に多発憩室を認めた.回盲部lipohyperplasia,回腸末端憩室症の診断で手術を施行した.手術は腹腔鏡補助下で開始したが回盲部と後腹膜が瘢痕状に癒着しており,開腹移行し回盲部切除術を施行した.病理組織学的診断にて,lipohyperplasiaおよび回腸末端多発憩室と診断された.回腸末端多発憩室は回盲弁のlipohyperplasiaによって回腸末端部の内圧が高まり,そのために回腸憩室が生じたと考えられた.
  • 本間 周作, 河本 和幸, 高木 弘誠, 伊藤 雅
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 130-135
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は55歳の男性で,2003年8月盲腸癌に対して結腸右半切除術を施行した.病理組織学的診断は,粘液癌,se,n2,ly3,v2,Stage IIIBであった.2006年1月頃から排尿困難を自覚し,同年12月前立腺生検にて粘液癌が検出され前立腺転移と診断した.前立腺以外に再発病巣が認められなかったため根治目的に2007年11月骨盤内臓全摘術を施行した.2010年12月頃から右陰囊腫大を自覚した.CT,PET-CTで盲腸癌の精巣転移が疑われた.2011年1月右高位精巣摘除術を施行し,病理組織学的検査にて盲腸癌右精巣転移と診断した.大腸癌の好発転移部位は肝臓,肺,骨であり,前立腺や精巣への転移はまれである.前立腺・精巣転移巣の切除は確定診断が得られるだけでなく,予後・QOLの改善に繋がる可能性があり選択されるべき治療法の一つと考える.
  • 深町 伸, 中川 国利, 小林 照忠, 遠藤 公人, 鈴木 幸正, 小川 仁, 手塚 文明
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 136-142
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は65歳の女性で,右下腹部鈍痛にて来院された.CTにて回盲部の腸重積を認め,緊急手術を施行した.横行結腸中央に達する腸重積があり,徒手整復すると盲腸に腫瘍を認めた.リンパ節転移を伴う盲腸癌と診断し,D3リンパ節郭清を伴う結腸右半切除術を施行した.切除標本にて盲腸に4.5×3.8 cm大の2型腫瘍を認めた.病理組織学的検査所見ではdesmin,S-100,CD34は陰性,c-kitが強陽性で,盲腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記),リンパ節転移陽性と診断された.術後8週目からイマチニブを開始したが,1か月後のCTにて多発性肝転移,腹腔内リンパ節転移を認めた.スニチニブに変更し部分奏効をえるも,術後5か月半で死亡した.リンパ節転移を伴った盲腸GISTは非常にまれで,いまだ本邦報告例はない.
  • 須藤 隆之, 藤田 倫寛, 御供 真吾, 梅邑 晃, 石田 馨, 上杉 憲幸, 菅井 有
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 143-150
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は57歳男性で,排便時出血を主訴に受診した.下部消化管精査にて肛門縁より約12 cmの部位に腫瘤を認めた.病理組織学的検査にて,大型の異型細胞が充実性に増殖し,endocrine cell carcinoma(以下,ECCと略記)疑いで低位前方切除術を施行した.病理組織学的検査にてECCの診断となる.大腸癌取扱い規約に従いecc,pSM2,pN1,Stage IIIaであった.腫瘍内にtubulovillous adenoma(以下,TVAと略記)とwell differentiated adenocarcinoma(以下,WDAと略記)の成分が共存していた.p53染色は,TVA,WDA,ECCいずれも陽性,ECCのMIB-1 indexは,TVA,WDAに比べて高値であった.直腸ECCは,予後不良といわれているが,本症例は術後8年7か月無再発生存中で組織発生を考えるうえで興味深かった.
  • 太田 裕之, 児玉 泰一, 川上 恭平, 塚山 正市, 藤岡 重一, 川浦 幸光
    原稿種別: 症例報告
    2013 年46 巻2 号 p. 151-157
    発行日: 2013/02/01
    公開日: 2013/02/15
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     症例は73歳の男性で,腹部膨満と嘔気が1週間持続するため2011年9月に当院を受診した.CTで横行結腸,左腎臓の胸腔内への脱出および十二指腸閉塞を伴うBochdalek孔ヘルニアと診断されて,緊急入院となった.十二指腸閉塞の原因は横隔膜ヘルニア嵌頓により上腸間膜動脈と大動脈の間で十二指腸が狭窄を受けて上腸間膜動脈症候群を呈しているためと考えられた.保存的加療を5日間行ったが症状の改善を認めないため横隔膜ヘルニア修復術を施行した.左横隔膜背側に欠損孔を認め,大網,横行結腸および左腎臓が胸腔内に嵌頓していた.臓器の血流障害はなく腹腔内に還納し,横隔膜欠損部を縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後6か月現在,再発徴候は認めていない.文献検索上,上腸間膜動脈症候群を伴う成人Bochdalek孔ヘルニアの報告例はなく,極めてまれな病態であると考えられた.
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