抄録
胃癌術後の横行結腸軸捻転症に対し内視鏡下に整復しえた症例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で,進行胃癌に対し,胃全摘,脾摘,D2郭清およびRoux-en-Y再建術(結腸前)を施行した.第5病日に腸閉塞と診断し絶飲食管理を開始した.その後も状態は改善せず,第7病日に腹部造影CTで脾彎曲での結腸の狭窄を認め,口側の横行結腸の捻転を認めたため,横行結腸軸捻転症と診断した.腹膜刺激症状を認めなかったためイレウス管を挿入し,経過を観察した.その後も上行結腸の拡張は改善を認めなかったため,第10病日に大腸内視鏡検査を施行した.脾彎曲で狭窄と粘膜の螺旋状の集中像を認めたが,血流障害を示唆する所見はなく内視鏡下に整復を行った.整復後の経過は良好で第21病日に退院した.術後12か月軸捻転の再発なく経過している.周術期に横行結腸の腸閉塞を認めた場合には,頻度は低いものの本疾患を念頭におく必要がある.