抄録
症例は63歳の男性で,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)に対して膵体尾部切除術を施行され経過観察中だった.検診目的で行われた上部消化管内視鏡検査で胃体中部に3 cmの粘膜下腫瘍が確認され,悪性疾患併存の可能性が完全に否定できなかったために胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査でhamartomatous inverted polyp(以下,HIPと略記)に特徴的な粘膜下層(以下,SMと略記)に分布する囊胞状拡張を示す胃底腺,幽門腺領域の粘膜内に高分化型腺癌が確認できた.HIPの本邦報告は自験例を含めて全31例で,胃癌の合併は4例で確認されているが,囊胞状拡張を示す粘膜内で癌を認めたのは自験例がはじめてであった.HIPのSMに分布する囊胞状病変内にも悪性疾患が存在する可能性が示された.