2015 年 48 巻 7 号 p. 644-649
フルオロウラシル(以下,5-FUと略記)有害事象を来したジヒドロピリミジナーゼ(dihydropyrimidinase;以下,DHPと略記)欠損症について報告する.症例は56歳の女性で,盲腸癌に対し回盲部切除術を施行し,病理組織学的診断はStage IIIaであった.カペシタビン内服後8日目に口内炎が出現し,10日目に中止したが,嘔吐,下痢,高熱,白血球減少を来し,播種性血管内凝固,意識障害に陥った.抗菌剤投与,顆粒球コロニー刺激因子投与,血液透析などにより,内服中止後17日目に解熱し,血液検査所見も正常化した.尿中ピリミジン分析にてジヒドロウラシルが異常高値を示し,遺伝子検査では1001A>G/1393C>Tのコンパウンドヘテロ接合体であり,DHP欠損症と診断した.DHP欠損症は5-FUの分解酵素DHPが欠損する極めてまれな遺伝疾患であり,本症例は本邦での5-FU有害事象初報告例である.