抄録
 症例は78歳の女性で,心筋梗塞の既往歴有り.嘔吐を主訴に当院を受診し,腹部CTを施行したところ,肝内胆管にpneumobiliaを認め,45 mm大の結石が十二指腸に嵌頓していた.胆囊十二指腸瘻に起因するBouveret症候群と診断して手術を施行したところ,胆囊および十二指腸は一塊となっており,結石も触知しえなかった.全身状態を考慮して,通過障害の解除目的に空置的胃空腸吻合術のみを施行した.術後84日目に嘔吐の再燃を認め,腹部CTを施行したところ,胃空腸吻合部の肛門側空腸に結石が移動して嵌頓しており,再手術にて結石を摘出した.術後の経過は良好であり,現在は外来通院治療としている.Bouveret症候群はまれな疾患で高齢者に多く,併存疾患から治療法の選択に悩まされることが多い.本症例は低侵襲を優先した手術方法を選択し,大きな合併症なく経過したので報告する.