目的:緊急手術を要する大腸穿孔症例において,簡便に施行できる術後合併症および予後予測因子の評価法を究明することを目的に検討を行った.方法:2007年3月から2015年4月までに緊急手術を施行した大腸穿孔36例を対象とした.対象を合併症群(22例)と非合併症群(14例),救命群(27例)と死亡群(9例)に分け,患者因子(年齢,性別,術前併存疾患,BMI,骨格筋量),術前因子(白血球数,リンパ球数,CRP値,アルブミン値,手術までの時間,systemic inflammatory response syndrome(SIRS)の有無,APACHE II score),術中因子(手術時間,術中出血量,腹腔内便汁汚染の有無,悪性腫瘍による穿孔の有無)について,比較検討した.結果:大腸穿孔術後合併症発生率は61.1%であり,単変量解析ではアルブミン値(P=0.027)と骨格筋量(P=0.044)が術後合併症のリスク因子であった.また,大腸穿孔術後死亡率は19.4%であり,単変量解析では,年齢,骨格筋量,アルブミン値およびAPACHE II scoreが予後関連因子となり,さらに多変量解析では,骨格筋量の低下のみが独立した予後因子として抽出された(P=0.047).結語:当院における大腸穿孔緊急手術症例において,骨格筋量の低下は独立した予後不良因子であった.今回使用したCT画像による骨格筋量測定は,術直前に簡便に施行可能であり,予後予測の評価に有用であると思われた.